言葉を学ぶことは文化をも学ぶことである。「今日と明日の日本語教育―21世紀のあけぼのに」

メルボルンセントラルにある The Little Libraryはその名の通り、本を自由に借りられる小さなスペースです。1st floorのサムスンショップの隣にあります。

借りた本を返却する代わりに別の本を持ってくることができるので、たまに覗くと面白そうな本が並んでいたりします。
今回、「今日と明日の日本語教育―21世紀のあけぼのに」という本を見つけたので読んでみました。

外国語習得に必要な3種類の能力とは?

本書の中で述べられていた、「三種類の能力」というのは、日本語に限らず、外国語を学ぶ上で重要な視点だと感じます。

  1. 文法能力
  2. 文法外コミュニケーション能力
  3. 社会文化能力

1.文法能力とは、狭義の「言語」と一致するもので、初級レベルでは「通じない」ことが問題となりますが、上級レベルでは、「通じる」けれども、発音の誤りなどの細かいエラーによって部外者扱いを受けることになる、とあります。オーストラリアは多民族国家なので、完璧な英語がいつも求められるわけではないし、移民だから部外者扱いをするということにはならないですが、日本は日本語を母語とする人が大半なので、言語的なミスに対して敏感に反応してしまうきらいがあります。

2.文法外コミュニケーション能力とは、やんわりとお願いするための言い回しだったり、どんな場面でどんなふうに応答すれば自然か、などといった、文法知識だけでは分からないコミュニケーションの決まりを理解しているかどうかです。はっきりと自分の意見を言うのが「正しい作法」かどうかは、その地域の文化によります。

3.社会文化能力とは、言語的なコミュニケーション自体ではなく、「日本文化」そのものに対する理解があるかどうかです。日常生活の送り方などのほか、日本人とはどういう考え方をするのか?ということが分かっていないと、円滑なコミュニケーションは難しいのです。

言語の習得は教室の中だけで行われるものではありません。外国語を習得するにあたって「文化」を学ぶというのは決して些細な要素ではなく、たとえ短期間でもホームステイなどで実際の生活を体験することは大変な意義があるのです。

ところで、著者のJ.V.Neustupny博士は、過去にモナシュ大学で教授をしていたというだけでなく、なんと千葉大学でも教鞭を執っておられたようです。ちょっと運命めいたものを感じます。

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